万大醸造

万大醸造

 修善寺町の中心部から狩野川の支流大見川に沿って2キロほど遡ったところにある酒蔵が万大醸造です。現在は日本酒にとどまらず、焼酎や伊豆半島特産ニューサマーオレンジ・枇杷などを使ったリキュール類なども醸造しています。

 

伊豆半島唯一の酒蔵

 伊豆に旅行に行くと、各地でその地域や名物の名前を冠した日本酒が販売されています。しかし、それらのほとんどは伊豆半島以外で醸造され、ラベルだけご当地もののように貼り付けたもの。そのような中、現在伊豆半島で日本酒を醸造している唯一の酒蔵がこの万大醸造なのです。
 宇佐見火山帯から流れてくる年川流域の湧水を仕込み水に、狩野川流域で契約栽培された良質の酒米を使って醸した、本物の「伊豆の地酒」です。

 

戦国時代からの伝統

 万大醸造の銘柄「萬耀」には、次のような逸話が伝わっています。
 伊東氏を破ってこの地を支配した伊勢新九郎長氏(宗瑞、後世北条早雲と呼ばれる)が勝ち戦で祝杯をあげたとき、「これぞまさしく萬代に萬の国に燿ける酒」であるとして「萬耀」と命名したとのことです。また、農家が自家製で酒(どぶろく)をつくっていた頃からずっとこの地で酒を造っていたと代々伝わっているそうです。
 ちなみに、気候の温暖な伊豆半島は酒どころのイメージはあまりないのですが、この地より北に10キロほどいった韮山の地では、中世以来「江川酒」という銘酒の産地として有名でした。今は韮山の地に酒蔵はありませんか(ビール醸造所はできた)、その伝統を引き継いでいるとも言えるでしょう(実際地元の愛好家と協力して「江川酒」と銘打った酒も醸造している)。

 

昔ながらの製法

 現在の日本酒の主流は雑味を嫌うため精米歩合を上げる(つまりいっぱい削っちゃう)傾向にあります。しかし、この蔵では「農家の人たちが丹精込めて育てた米なのだから、できるだけ少しでも多く活かしたい…それが自然な酒造りではないか」との考えのもと、比較的低めの精白度での醸造をしているようです。最近の「きれい」なお酒ばかり飲んでいる人には賛否あるかもしれませんが、本当の酒好きの人こそ好まれる味なのではないでしょうか。